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真空蒸着とは?めっき加工との違い

真空蒸着 めっき
特徴

目的の金属を気化させて対象物へ触れさせて、対象物の表面に金属の皮膜を形成する加工法(乾式めっき)。

めっき液に対象物を浸して処理を行い、対象物の表面に金属素材の薄膜を形成する加工法(湿式めっき)。

メリット
  • 金属や非金属のどちらであっても加工が可能
  • 全体的に均一な薄膜を形成しやすく膜品質が高い
  • めっきに使う成分を変更することで特性を変えられる
  • 大量のめっき製品を量産することができる
デメリット
  • 目的の金属を気化させて真空状態で処理する設備がいる
  • 膜厚が薄いために金属被膜が剥がれる可能性がある
  • 対象物のサイズや素材によって加工できない場合もある
  • 対象物の素材によっては事前の処理などが必要で工数が増える
目次

真空蒸着の特徴

真空蒸着とは

真空蒸着とは、加工対象となるワークに対して、目的の金属を気化(蒸発)させた上、真空中でワークに気体金属を触れさせることでワークの表面に薄い金属皮膜を形成する加工法です。めっき液を使用するめっき加工(湿式めっき)に対して、気体を使用するため乾式めっきと呼ばれることもあります。

なお、「蒸着」という言葉にはさらに「物理蒸着」と「化学蒸着」という加工法に大別されますが、一般的には物理蒸着に属する「真空蒸着」のみを「蒸着」と呼ぶことも少なくありません。

真空蒸着とスパッタリングの違い

物理蒸着の中には「スパッタリング」という加工法もあります。真空蒸着とスパッタリングはどちらも物理的薄膜形成技術として分類されますが、真空蒸着は文字通り真空状態で対象物と気体金属を接触させるのに対して、スパッタリングは電気を使ってイオン化させた材料成分を対象物に衝突させて固体形成物質を放出させます。

そのため、真空蒸着とスパッタリングでは根本的な加工の化学的性質が異なる点に注意してください。

真空蒸着の種類

真空蒸着では、目的の金属成分を蒸発させて気化しなければなりません。この際、金属を気化させるための加熱方法として、大きく3種類の方法が利用されます。

  • 抵抗加熱
  • 高周波誘導加熱
  • 電子ビーム加熱

いずれの場合も目的の金属成分を試料を加熱して蒸発させることで気体金属を得ますが、与えられるエネルギー量や仕組みが異なるために対象ごとに使い分けられる点が特徴です。

真空蒸着のメリット

様々な素材を対象物として加工できる

真空蒸着を行う場合、ワークへ電気を通電させて電気的特性を活用したり、ワークを任意のめっき液へ浸して加工したりといった必要がありません。そのため、気体金属を真空中で接触させられるサイズや素材のワークであれば、金属・非金属を問わずに表面加工することが可能です。

高品質な薄膜形成を目指しやすい

真空蒸着は、作業環境から大気を取り除いた真空中の加工作業となるため、気体金属がワークへ接触することを妨げるものがありません。そのため、ワークの表面へ均一で高品質な薄膜を形成しやすいこともポイントです。

真空蒸着のデメリット

薄い膜のため耐久性や耐摩耗性に劣る場合がある

真空蒸着は薄い膜をワーク全体へ形成できる反面、膜そのものが薄いために使用条件や環境によっては表面の薄膜層が剥がれやすかったり、耐久性・耐摩耗性・耐候性などに劣ったりしてしまう可能性もあります。

対象物のサイズや量が制限される場合もある

真空蒸着では真空中で対象物を回転させ、蒸発した気体金属を接触させて薄膜を形成させるため、真空環境で処理できない大型サイズのワークなどでは対応できない可能性もあるでしょう。

「めっきのめ」編集チームより

「めっきのめ」編集チーム

めっき加工と真空蒸着の特性を比較して考える

真空蒸着は乾式めっきとも呼ばれるように、めっき液を使用するめっき加工と根本的に加工のシステムが異なります。そのため、めっき加工では対応困難な対象物に関しても真空蒸着であれば表面加工を行えるかも知れません。

しかし、言い換えればそれは真空蒸着よりもめっき加工の方が適しているケースも少なくないということです。そのため、めっき加工と真空蒸着のどちらを選んで加工するかは、まず両者の特性やメリット・デメリット、対応可能な素材の範囲などを総合的に比較検討してから決めなければなりません。

以下のページではめっき加工についてのケーススタディとして相談事例などを解説していますので、真空蒸着とめっき加工を比較する一助としてご活用ください。

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取材協力

めっきのプロにめっき加工のイロハを教えていただきました!

日本電鍍工業株式会社:寺内氏代表取締役社長寺内氏

日本電鍍工業株式会社

電気めっき業界の組合、「全国鍍金工業組合連合会(全鍍連)」にて、令和4年度に優良環境事業所の認定を受けためっき加工メーカー。
SURTECH 2023 表面技術要素展では大阪を代表して出展。クライアントの課題を解決するだけでなく、めっきの研究部門を創設し、技術向上に励むめっきのスペシャリスト。

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