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アルミめっき鋼板

アルミめっき鋼板は冷延鋼板へアルミニウムなどの合金を溶融めっきした素材です。このページでは、アルミめっき鋼板の特徴や製造法、さらにアルミめっき鋼板を加工する際の注意点などについてまとめています。

アルミめっき鋼板とは?

鋼板をアルミニウムでめっきした素材

アルミめっき鋼板とは、冷延鋼板へアルミニウムなどで構成される合金をめっき加工した金属素材であり、鋼板が持つ強度やコスト性を活かしながら、アルミめっきによって耐食性や耐熱性・熱反射性などを向上されていることが特徴です。

めっきに用いられる金属にはアルミニウムをベースとした合金が採用され、アルミニウムとシリコンの合金によって作られたものをアルミめっき鋼板と呼びます。またアルミニウムと亜鉛による合金で作られた亜鉛めっき鋼板は「ガルバリウム鋼板」として建材など広い分野で活用されています。

アルミめっき鋼板の製造方法

アルミめっき鋼板は一般的に溶融アルミめっきを使って表面にめっき加工が施されますが、溶融アルミめっきは溶融亜鉛めっきの場合と比べて浴温度が高温になっていることが重要です。

通常、溶融亜鉛めっきの浴温度は450度前後であることに対して、溶融アルミめっきは700度前後にまで熱されており、均一な加工を再現するために相応の設備や技術が求められる点は無視できません。しかし高温処理を必要とする溶融アルミめっきだからこそ、処理後の耐熱性や耐久性に優れていることもポイントです。

そのためアルミめっき鋼板の製造を依頼する場合、あらかじめ十分な実績やノウハウを有している加工会社やメーカーを探すことが欠かせません。

アルミめっき鋼で耐熱性が向上される理由

上述した通り、高温処理を必要とする溶融アルミめっきの特性として耐熱性に優れていることが挙げられますが、そもそもアルミめっき鋼が高度な耐熱性を獲得できる理由は単にアルミの融点が高いだけではありません。

まず、アルミニウムの融点はおよそ660度であり、一方の亜鉛は約420度です。つまり金属元素として根本的にアルミの方が亜鉛より熱に強いという前提があります。そのため適切に製造されたアルミめっき鋼板であれば、通常350~450度の環境(温度範囲)で長期間使い続けたとしても外観の変化や変質といったトラブルがほとんど生じないとされています。また、特にアルミめっき鋼に関して、素材表面のアルミが大気中の酸素と反応して形成する酸化被膜層(酸化アルミニウム層)はセラミックスの性質を備えており、それ自体も耐熱性に優れていることが特徴です。

加えて、450度を超えるような環境でアルミめっき鋼を使用する場合、鉄とアルミニウムの相互拡散による鉄-アルミ(Fe-Al)合金層が形成され、表面の色が灰色から徐々に濃度を高めて黒変していくものの、Fe-Al合金層と酸素が反応して高温酸化層が形成されるため、やはりその下層への熱影響を抑えられることがポイントです。

このような複合的な耐熱特性により、アルミめっき鋼はおよそ600度までであれば急激な酸化消耗を避けることが可能となります。

アルミめっき鋼板のメリット

アルミめっき鋼板のメリットとしてはまず、アルミニウムの特性を活かして、対象となる素材の表面に耐食性を付与できることが挙げられます。これにより通常は錆びやすい鋼板でも腐食しにくくなり、例えば雨風にさらされる建物の屋根や外壁材として利用することが可能です。

また熱にも強いため、ガスレンジやガスストーブ、車やバイクの内燃機関やマフラーといった高温にさらされる環境でも安定した機能性を維持しやすい点はメリットです。

その他にも大型の素材などに加工しやすいことが挙げられます。

製造工程におけるメリット

アルミめっき鋼板のメリットとして、素材そのものの特性的メリットだけでなく、そもそも製造工程における段階から考えられる内容があることも重要です。

アルミめっき鋼板の製造上の利点としては、主として以下のようなものが挙げられます。

めっき付着量やコストのコントロール

アルミめっき鋼板の製造上のメリットとして、まずアルミ付着を均一化できる上、付着するアルミの量をコントロールしやすいことがあります。これにより目付管理が容易になり、素材ロスを防いでコスト面でも利点を追求することが可能です。

そもそもアルミめっきは亜鉛めっきよりも高コスト化しやすい点が課題であり、だからこそアルミめっきのコストを適正化することでデメリットを軽減し、コストパフォーマンスを高められる点は見逃せません。

薄目付製品

目付をコントロールしやすいため、両面の付着量を最小化して薄付けすることもできます。これは素材としての溶接性や加工性の向上に寄与します。

美しい外観や特性の付与

アルミニウムの美しい銀白色を再現するだけでなく、任意の特性を付与して外観的自由度を得られることもメリットです。

アルミめっき鋼板のデメリット

アルミめっき鋼板のデメリットとしては、まず溶融アルミめっきによって加工されるため、電気亜鉛めっきなどで加工される場合よりも表面の均一性や製品品質を保ちにくいことが重要です。そのためアルミめっき鋼板の品質を追求するためには、適切な設備や加工技術を必要としており、生産できる業者が限られてしまうことは無視できません。

加えて、必然的に製造コストが高くなりやすく、少量生産やサンプル試作などでは特に費用対効果の計算が難しくなります。

アルミめっき鋼板のメンテナンスサイクル

アルミめっき鋼板の耐用年数やメンテナンスサイクルは、使用されている合金やめっき加工の方法などによって異なります。溶融めっきの場合は一般的に9~12年ごとにメンテナンスすることが推奨されますが、製品によっては品質保証年数がそれより短くなることもあります。

アルミめっき鋼板の加工法

曲げ加工

素材の金属板に対して物理的に圧をかけて板を曲げ、任意の形状へ成形する曲げ加工は機械加工において代表的な加工法の1つです。そのためアルミめっき鋼板においても曲げ加工は通常に使用される加工法です。

ただし、曲げる程度(曲げ半径)を適切に設定できない場合、鋼板の表面のアルミめっきに亀裂が生じたり、剥離したりといった不具合が発生しやすくなります。そのためアルミめっき鋼板の曲げ加工においては、曲げ半径を板厚の1倍以上にすることが必要とされます。

プレス加工

プレス金型などを用いて、鋼板を任意の形状に成形するプレス加工の場合、シンプルな張り出し加工であればそれほどめっき剥離のリスクが高くないことはポイントです。そのため成形限界まで加工することができます。

一方、深絞り加工の場合はダイス肩半径が小さすぎるとめっきの剥離が発生しやすくなります。そのためプレス加工の深絞り加工にアルミめっき鋼板を用いる場合、肩半径は板厚の6倍以上に設定することが望ましいでしょう。

溶接

溶接には複数の溶接方法が存在しますが、アルミめっき鋼板の溶接加工においても適切な溶接施工の方法や溶接条件を選択することが大切です。

アルミめっき鋼板の溶接に関しては、まず電気抵抗溶接によるスポット溶接やシーム溶接が適しているとされています。また溶融溶接も可能ですが、TIG溶接であれば相応に良好な溶接結果を得られる一方、被膜アーク溶接や酸素アセチレン炎溶接のようなガス溶接の場合、溶接棒や溶剤の選択が難しくなる点に注意してください。

加工時に損傷しためっき被膜について

加工時の不備や条件設定の不足によってアルミめっき鋼板の表面にめっきの亀裂や剥離が生じた場合、ある程度までは耐食アルミペイントの塗布によって補修することが可能です。また、切断面や抵抗溶接部については製品の実用性として補修の必要はありません。

なお特に美観などを追求する製品の場合は別途注意や検証が必要です。

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