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アルミニウムにめっきできますか?

加工性に優れており、軽量なアルミニウムは幅広い用途で使用されている素材。しかし、一般的にアルミニウムはめっき加工がしづらいとされています。そんなアルミニウムにめっきを施すことは可能なのでしょうか?情報をまとめてみました。

目次
アルミ

アルミニウムにめっきをするメリット・デメリット

メリット

めっきは様々な金属特性を対象の基材へ付与することが可能な表面加工であり、アルミニウム素材に対しても電気的特性を付与したり機械的特性を変化させたりといったことが可能になります。またカラーめっきなど装飾性に優れためっき加工を選択することにより、製品の色を変えたり美観を高めたりといったメリットを得ることも可能です。

アルミニウムは軽量金属であり、めっきによって耐摩耗性や耐振動性など任意の金属特性を獲得させられれば、アルミニウムの軽さを維持しながら目的の金属的性質を実現するなど、素材としての有用性を追求することができます。

また、アルミニウムそのものは導電性の高い金属ですが、その表面にある酸化被膜は通電性が悪いため、めっき加工で素材表面の通電性を向上させることもできるでしょう。

デメリット

アルミニウムは素材表面の酸化被膜の影響があるため、そもそも鉄など一般的にめっき加工の基材として用いられる金属元素と比較すると、めっき加工を行いにくい点がデメリットです。

アルミニウムのめっき加工を行うためには事前処理として酸化被膜の除去といった工程が必要になり、通常のめっき工程よりも工数が増えてコストや納期が増えてしまう点は無視できません。またアルミニウム鋳物のような一層に難易度の高い素材もあり、アルミニウムのめっき加工は相応のノウハウや実績を有する業者にしか依頼できないといった問題もあります。

アルミニウムにめっきをする工程

上述したように、アルミニウムへめっき加工を施す場合は事前に複数の処理を行って、そもそも対象となる基材をめっき可能な状態にしなければなりません。

アルミニウムへめっき加工をする流れとしては、各工程の合間に行われる洗浄工程などを除けば主として以下のようになります。

  • 1.研磨
  • 2.脱脂
  • 3.エッチング
  • 4.スマット除去
  • 5.ジンケート
  • 6.めっき処理

1.研磨

アルミニウムの純金属素材を利用するのでなく、アルミニウム鋳物やダイカスト製品などを使用する場合、それらを製造した際に鋳巣や湯じわが発生したり、金型から素材を取り外す時の剥離剤・離型剤が残存してしまったりすることもあります。加えて、アルミニウムは柔らかい金属なので切削加工時のバリなども発生しやすく、そのままの状態では後の品質に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。

そのため、まずはそれらを除去するためにアルミニウム素材の研磨が行われます。

2.脱脂

脱脂とは素材の表面に付着している汚れや油分などを除去する工程です。一般的に鉄やステンレスなどの素材であれば水酸化ナトリウム水溶液といった強アルカリ性の薬液が脱脂に使用されますが、アルミニウムは酸性にもアルカリ性にも反応する金属のため、水酸化ナトリウム水溶液などの強アルカリ脱脂剤を使用することができません。

そのためアルミニウムの脱脂には中性の脱脂剤や、あるいは弱アルカリ性の脱脂剤が使用されますが、特に後者においてはpH管理を適性にして素材へのダメージを防ぐことが大切です。

3.エッチング

エッチングは化学薬品の腐食作用で表面の一部を剥離したり削ったりする加工であり、アルミニウムの場合は予備脱脂に加えてアルミニウム素材の表面にある酸化被膜を除去する工程となります。

ただしエッチングには高温下で強アルカリ性のエッチング液が使用されるため、アルミニウムの酸化被膜を除去するためのエッチング工程では適切な反応条件や処理時間が管理されなければ腐食作用がアルミニウムの基材本体へ悪影響を与えるリスクもあります。

そのためエッチングでは基材へダメージを与えず、酸化被膜のみを除去できるよう適正なコントロールが肝要です。なお、最終的に鏡面光沢仕上げを求める場合にはアルカリ溶液でなく、酸性フッ化アンモニウムのような酸性エッチング液が使われることもあります。

4.スマット除去

スマット除去とは素材表面の不純物や合金成分を除去する工程であり、アルミニウムのエッチングによって処理できなかった残留物(スマット)を除去することを意味します。

そもそもアルミニウム合金では銅やケイ素といった不純物が含まれているため、除去したい元素に合わせて適切な薬液を利用してスマットを取り除かなければなりません。

5.ジンケート

ジンケートとは、アルミニウム素材の表面から酸化被膜を除去すると共に、その代わりとして密着性に優れた亜鉛被膜を形成させる工程です。アルミニウムの酸化被膜を除去したとしても、そのままの状態では大気中の酸素と反応して再び酸化被膜が形成されます。しかし亜鉛被膜によってアルミニウムの表面をカバーすることで、酸素との反応を遮断して酸化被膜の再形成を防ぐことが可能です。

ジンケートでは、亜鉛を含有するジンケート液の中へアルミニウム素材を浸して酸化被膜を除去し、さらにアルミニウム元素と亜鉛元素を反応させてアルミニウム表面に亜鉛を析出させます。ただし、一度の処理では均一な亜鉛被膜を形成させることが困難なため、強酸溶液で亜鉛を剥離させてから再びジンケート加工を行う「ダブルジンケート処理」が行われることも少なくありません。

6.めっき処理

ジンケートによる処理が完了した後、改めて任意の金属元素を含有しためっき液によるめっき処理を行います。

めっき方法には電気めっきや無電解めっきといった方法を選択することができますが、めっき液に含まれる金属の性質とアルミニウムとの相性によってはストライクめっきが採用されることもあります。

アルミニウムにめっきをする場合の注意点とは

アルミニウムはめっき加工が難しい「難めっき材」

めっき皮膜がつきにくい「難めっき材」として知られているアルミニウム。その原因は、アルミニウムの酸化被膜にあります。

アルミニウムは大気中の酸素との反応性が非常に高く、素材表面に酸化被膜が形成されます。この酸化被膜はアルミニウムの耐食性を高めるのにひと役買っているのですが、それが絶縁層になり、電流が流れにくくなってめっき皮膜の析出を阻害してしまうのです。

アルミニウムのめっきには前処理が必須

アルミニウムにめっき加工を施すには、酸化皮膜を除去してめっきの密着性を確保する必要があります。酸化被膜を除去した後、ジンケート処理が必要となります。これはアルミニウム自身を溶かしてそれと同時に亜鉛皮膜を置換析出させる技術。

密着性に優れた亜鉛皮膜を付着させることで酸化被膜の形成を防ぐことができ、アルミニウムへのめっき加工が可能となります。

アルミニウム鋳物は、さらにめっきが難しい

アルミニウムはめっきが付きにくい難めっき材ですが、アルミニウム鋳物はさらに加工が困難な素材です。密着性が非常に取りづらく、鋳物品は製品によって表面の状態が異なるため、それぞれで試作~品質管理が必要となるのです。アルミニウム鋳物へのめっき加工は実績とノウハウが仕上がりを大きく左右するため、たしかな技術を持つ会社に依頼しましょう。

アルミニウムを使った製品とめっき加工製品との比較

めっきホイールとアルミホイールの違い

自動車のホイール製造の分野では、錆びやすい鉄の耐食性や耐久性を向上させて美しい外観を叶えるために、クロムめっきや真空蒸着といった表面処理加工が活用されます。一方で、アルミホイールは軽くて錆には強いものの、強度・耐久性には追加の加工が必要です。

めっきホイールとアルミホイールの違いをまとめました。

アルミめっき鋼板について

アルミめっき鋼板は、冷延鋼板へアルミニウムを使った合金に溶融めっきを施し、鋼板の耐食性や耐熱性を向上させた素材です。合金にはアルミニウムの他にシリコンや亜鉛が用いられており、亜鉛を用いたアルミめっき鋼板はガルバリウム鋼板として建材などに使用されています。

アルミめっき鋼板の特徴や加工時の注意点などについてまとめました。

日本電鍍工業株式会社 めっきの匠 日本電鍍工業株式会社寺内氏

取材協力:日本電鍍工業株式会社

アルミにめっきは可能です!

アルミは表面に酸化被膜(酸素の被膜)があり、非常にめっきがしにくい金属です。だからといって、アルミにめっきができないかというと、めっきは可能です。

よく混同されるのが「アルマイト」。アルマイトは、アルミの酸化被膜を膨らませたもので、めっきとは別なのですが、「アルミのめっき=アルマイト」と認識している方もいるのではないでしょうか。

こうした特性を理解し、金属によって適切な対応をするのが、私たち日本電鍍工業が得意とするめっき加工なんです。

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取材協力

めっきのプロにめっき加工のイロハを教えていただきました!

日本電鍍工業株式会社:寺内氏代表取締役社長寺内氏

日本電鍍工業株式会社

電気めっき業界の組合、「全国鍍金工業組合連合会(全鍍連)」にて、令和4年度に優良環境事業所の認定を受けためっき加工メーカー。
SURTECH 2023 表面技術要素展では大阪を代表して出展。クライアントの課題を解決するだけでなく、めっきの研究部門を創設し、技術向上に励むめっきのスペシャリスト。