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エッチングとは?めっき加工との違い

エッチング めっき
特徴

物質の表面を、化学薬品または電気化学的に腐食させる表面加工。

金属の薄い膜で物質を覆う表面加工。装飾や防錆効果のほか、使用する金属によって多様な機能を付与できる。

メリット
  • 金型を作る必要がない分、コストを削減できる
  • 切削などより精密な加工が可能
  • 物質や製品の見た目を良くできる
  • 大量生産が可能
デメリット
  • 工数が多く、大量生産では高コスト
  • 厚板の場合、精密加工が難しい
  • 工程数が多いため作業に手間がかかる
  • 製品と素材の相性によっては加工できないことも

表面処理方法の一種であるエッチングとはどのような処理なのか、めっきとの関係性・違いについてご紹介しています。エッチングを施すメリットとデメリットについてもチェックしておいてください。

目次

エッチングの特徴

エッチングとは

エッチングとは、酸やアルカリといった化学薬品の腐食作用を利用して、表面の一部を削る加工法。一般的に、平滑な面に皮膜・塗膜を付けるのは難しいですが、エッチングで素材表面に凹凸を作ることにより密着力を向上させることができます。

部分的なエッチングも可能で、エッチングを行いたくない部分にはレジスト処理を実施。レジスト処理とは、エッチングをしたくない部分を樹脂素材などで保護する処理で、露出している部分のみがエッチングされます。

エッチングの種類

エッチングは銅や鉄といった金属、ガラス・半導体などに対して用いられる技術で、ドライエッチングとウェットエッチングの2種類があります。

ドライエッチング

ドライエッチングとは、エッチングガスをプラズマ化し、そこから生まれるイオン・ラジカル・中性粒子を用いる方法。プラズマ化したエッチングガスで材料表面の原子を除去し、表面加工を行います。装置内を真空にする必要があるため比較的大がかりな設備が必要ですが、ガスの制御は比較的容易です。主に、半導体回路の製造に用いられています。

ウェットエッチング

ウェットエッチングとは、酸性・アルカリ性のエッチング液の腐食性を利用し、材料の除去を行う方法。プリント基板や、フレキシブル基盤(FPC)などに使用されています。構造がシンプルであるためドライエッチングに比べるとコストが低く、対象物へのダメージも少ないのが特徴です。ただし薬液の管理が難しく、廃液が必要というデメリットがあります。

めっきとエッチングの違い

エッチングは、めっきの前工程として用いられる加工方法のひとつです。素材表面が平滑だとめっきの密着力が弱くなるため、エッチングによって表面に凹凸を付けるのです。こうすることでめっき加工に適した表面となり、素材とめっきの密着力が向上します。とくに非金属素材へのめっき加工において、エッチングという前工程を省くと密着不良となり、めっきが剥がれやすくなるため注意が必要です。

エッチングのメリット

金型の作成が不要

プレス加工には金型の作成が必要ですが、エッチングであれば金型は不要。金型作成の時間も手間もないため、短納期での製作が可能となっています。また、高価な金型が不要な分、イニシャルコストの大幅削減も期待できるでしょう。さらに、小ロット生産にも対応でき、多品種を短納期で加工・生産することもできます。

繊細な加工に対応、変更も容易

エッチングは、プレス加工に比べて繊細な加工に向いているのもメリットです。金型を作成するプレス加工では細かい加工が困難ですが、エッチングであれば細かいデザインにも対応可能。パターンの変更にも柔軟に応じることができ、試作品なども作りやすくなっています。

非接触加工のため変形しにくい

エッチングは、いわゆる非接触加工です。プレス加工などの機械的な加工では素材に負荷がかかるため、ひずみ・バリ・カエリ・たわみなどが発生するケースがありますが、エッチングであればほぼ問題なし。加工時の負荷を大幅に軽減でき、変形しにくいのもメリットのひとつでしょう。

エッチングのデメリット

加工コストが高く、大量生産には向かない

エッチングは、CADによる原版作成→処理前洗浄→レジスト処理→露光→レジスト除去→エッチング→レジスト剥離→検査といった流れで進み、工数が多くなっています。そのため、加工時のコストが高くなりやすいのがデメリット。多品種小ロット生産には向いているのですが、大量生産には不向きなのです。

その点、大量生産に適しているのはプレス加工。たしかに金型の作成にはコストと時間がかかりますが、一度作ってしまえばその後の工程数は少なくて済み、大量生産も容易に行うことができるのです。

厚板の加工には不向き

化学的に素材表面を腐食させるエッチングは、薄板金属の精密加工に向いた方法。厚板の加工に関しては、不向きであるとされています。素材が厚くなればなるほど加工断面のテーパーおよび角の丸みが大きくなり、加工の精度は低下。メーカーによって対応可能な素材・厚さは異なりますが、一般的には2㎜までが限度とされています。

「めっきのめ」編集チームより

「めっきのめ」編集チーム

エッチング後のめっき加工も考慮しましょう

プレス加工と異なり、金型の設計・作製などの必要がなく、短期間・低コストでの加工が実現するエッチング。デザインやパターンの変更も比較的容易に行えるため、試作品作りにも向いています。

ただし、小ロットであれば多くのメリットを享受できますが、大量生産になるとデメリットのほうがクローズアップされやすくなります。エッチング後のめっき加工についてのコストも考慮する必要があるため、専門家の意見も参考にしつつ、どの方法が適しているのかしっかりと吟味して判断しましょう。

以下では、めっき加工の相談事例を詳しく解説しています。ぜひご確認ください。

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取材協力

めっきのプロにめっき加工のイロハを教えていただきました!

日本電鍍工業株式会社:寺内氏代表取締役社長寺内氏

日本電鍍工業株式会社

電気めっき業界の組合、「全国鍍金工業組合連合会(全鍍連)」にて、令和4年度に優良環境事業所の認定を受けためっき加工メーカー。
SURTECH 2023 表面技術要素展では大阪を代表して出展。クライアントの課題を解決するだけでなく、めっきの研究部門を創設し、技術向上に励むめっきのスペシャリスト。

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