アルミニウムへの銀めっき:用途と特徴
アルミニウムに銀めっきを施すメリット
電気伝導性(導電性)の向上
アルミニウムの表面の酸化被膜は電気を通しにくいため、電子部品などの素材として活用することは通常困難です。一方、銀はとても電気を通しやすい金属であり、銀をめっきすることで軽量性を維持しつつ導電性を向上可能です。
はんだ付け性の向上
銀は「はんだ」となじみやすい金属であり、はんだ付け性の向上に貢献します。
耐摩耗性の向上
銀はアルミニウムよりもモース硬度が低く、そのままではアルミニウムより傷が付きやすい素材ですが、銀めっきに添加剤を加えることで硬度を高めて耐摩耗性を向上させることができます。
抗菌効果・安全性の向上
銀は古くから食器や調理器具などにも使用されてきた素材ですが、銀イオンの働きによる抗菌効果や殺菌効果は見逃せません。
美観の向上
銀は金属光沢が素晴らしく美観に優れる反面、その重量が大きいことが課題です。しかし軽量なアルミニウムに銀めっきを施すことで、軽量かつ美しい素材を獲得することができます。
アルミニウム銀めっきの技術的課題と解決策
前処理の重要性
アルミニウムは自然な状態では大気中の酸素と反応して表面に酸化被膜を形成しており、めっき加工を施す際には事前に酸化被膜を除去するといった処理が必要です。
酸化膜の除去
アルミニウムの表面に存在している酸化被膜(酸化アルミニウム被膜)が残っていると、めっき密着性が低下してめっき品質が悪くなってしまいます。そのため事前にアルカリ性処理液などを使って酸化被膜を除去することが不可欠です。
ジンケート処理
ジンケート処理はアルミ材のめっき加工で重要な工程であり、置換反応でアルミ材を溶解させつつ素材表面に亜鉛被膜を析出させます。これにより酸化被膜が再び生成されることを防止できます。
中間層としての下地めっき
ストライクめっき
アルミ材へのめっき加工では、目的とする金属めっきの被膜密着性を向上させるため、事前に下地としてニッケルめっきや銅めっきなどを施し、中間層として活用することも可能です。
これらの下地めっき処理は「ストライクめっき」と呼ばれ、最終的なめっき仕上げの特性に合わせてストライクめっきに用いられる金属元素も異なります。
アルミニウムへのめっき加工や銀めっきに関する技術動向
ナノレベルの均一めっき技術の開発
板材などでなく粉体を製造するような場合において、通常のめっき加工では粉体が粒子が破砕されたり微細化されたりした際に、下地の露出が生じるといった問題があります。
このような問題に対処するため、そもそもナノレベルで銀めっきを施す技術も研究・開発されている点は要チェックです。
低環境負荷の前処理技術の開発
アルミニウム素材の事前加工として用いられる方法の1つにアルミ化成処理というものがありますが、従来の六価クロムを使用したクロメート処理では六価クロムの有害性から環境規制(RoHS指令)に抵触してしまうため、より安全で環境負荷を軽減する三価・ノンクロメート処理といった方法も開発されています。
めっき加工のことがよくわかるメディア「めっきのめ」