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金めっき

金めっきは、古くから装飾に取り入れられてきた技術です。最近は電子部品などにも多く使われています。単に見栄えが良いだけではなく、耐久性が上がるのが特徴です。金めっきの種類やメリット・デメリットをまとめました。

金めっきとは

金めっきは、金を使用しためっき加工です。中の素材を金の膜でコーティングすることで、金がもつ「安定して耐食性に優れた性質」と「キラキラと輝く美しい外観」を活かせます。アクセサリーを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、最近では装飾用の用途より電子製品や工業用部品としての利用が増加しています。

大きな特徴は、耐腐食性・耐酸化性・電気伝導性・熱伝導性です。接触抵抗も低くはんだ付けが良好。他のめっきと比較すると価格は高価ですが、金だけで作られた製品と比較すれば安価です。

純金めっき(軟質金めっき)とは

純金めっきは、軟質金めっきとも言われています。純度が99.9%の純金を使用しためっきのことです。金そのものの性質を製品に付加できます。純度が高いため、熱や圧力、超音波をかけることで金線やアルミニウム線への接合が簡単です。

工業分野では、半導体部品の接合用に使用される他、IC部品や薄膜の回路・電極などにも使われています。

硬質金めっきとは

硬質金めっきは、めっきに使用する金にコバルト・ニッケル・銀・銅・インジウムなどを金に添加しています。強度や耐摩耗性は向上するのが特徴。純金めっきと比較して、硬度は約2倍、耐摩耗性は3倍に向上するとされています。金そのものの性質とは変化する点には注意が必要です。アクセサリーに使用するとアレルギーリスクを軽減できません。

硬質金めっきは、強度が向上するため、耐摩耗性を要求される電子機器部品に多く使用されています。電子部品のスイッチの接点のような動きの多い部分に特に使用される傾向があります。

金めっきの機能とメリット

耐食性に優れアイテムを長持ちさせる

金めっきの最大のメリットは、耐食性に優れていることです。金属のサビなどを防ぐことができます。金めっきを施したアイテムを長持ちさせるため、コストパフォーマンスが良好です。

奈良の東大寺の大仏など、古い時代のものでも金めっきが施されていると良い状態で保存されています。古墳から出土した青銅器の金めっきを思い出すと、その耐食性は一目瞭然でしょう。現在は電気めっきが可能になりましたが、古来の金めっきはアマルガム法と呼ばれる技術で施されていました。

電気抵抗性が小さく熱伝導に優れている

金めっきは、電気抵抗性が銀・銅に次いで小さいことにも特徴があります。電気伝導性と同時に熱伝導にも優れていて、高温での使用も可能です。また、電子工業の中核的材料であるシリコンとの共晶による接合もできます

電気伝導性・熱伝導性・シリコンとの相性といった利便性の高さから、コネクタ、センサー電極、半導体部品、光学部品といった電子工業分野での利用が普及しました。また、医療用部品や航空宇宙技術分野での利用にも発展しています。

価格が安くコストパフォーマンスが良い

金は、耐食性・熱伝導性・電気伝導性などに優れた金属です。しかし、産出量が少ないため高価なことは誰もが知っていることでしょう。たとえば工業製品として金のみで製造したものを取り入れるのは無理があります。

しかし、めっきという技術を使えば、金の使用量を最小限に抑え、金の特性を素材に付与することが可能。めっき膜厚や部分使用により、金の量をコントロールできます。金めっきは価格が安いのも特徴のひとつです。金のメリットを活かしながらもコストダウンできます。

はんだ付け性を良好な状態で長期間維持できる

はんだ付け性を良好にしてくれるのが金めっきです。たとえば、ニッケルや銅は表面に酸化被膜が生成してしまいます。はんだ付けする際は酸化被膜を介した接合です。強度や信頼性にリスクが生じます。そのリスクを低減するのが金めっきです。

ニッケルめっきの上に金めっきを薄くつけると、ニッケル表面の酸化を抑制できます。さらに金自体の酸化や腐食に強い金属としての特性を付加可能。良好なはんだ付け性を長期間にわたって維持させることができます。

金属アレルギー対策や装飾に利用できる

金属が剥き出しのアイテムは、金属アレルギーを起こす人が少なくありません。金・銀・プラチナなら金属アレルギーのリスクがほとんどありませんが、これらの金属をそのまま使用すると高価です。純金めっきを施し、表面をコーティングすることで、金属アレルギーの発生を抑えることができます。ただし硬質金めっきはアレルギー対策にはなりません。

また、装飾性の高さも見逃せないメリットです。金の輝きは、高級感や品格、意匠性を感じさせます。金めっきにすれば、安価で金の装飾性を享受可能です。

金めっきのデメリット

膨れやはがれが起こる

金めっきは薄い金の膜を施している状態です。薄くて硬い膜のため、わずかな衝撃ではがれやすいというデメリットがあることを知っておく必要があります。強度はありますが、乱暴な取り扱いには気を付けたいです。

膨れやはがれが起こる原因には、衝撃の他にも介在物があります。素材の界面にめっき被膜以外の介在物があると密着不良が発生。そこから膨れ・はがれが発生することがあります。また、めっき中の電流中断・作業の中断・後工程の熱処理加工なども膨れ・はがれが発生する原因のひとつです。

色褪せると修復しにくい

金は、それ自体は変色しにくい安定した素材です。しかし、金めっきは変色しやすく黒ずみができやすいというデメリットを持っています。変色の理由として考えられるのは、金めっきのピンホールです。目視できないような小さな穴から、下地のめっきや素材の酸化物、腐食の生成物が表面に出てくることで、変色を起こしてしまう可能性があります。

金は長期保存に向いている素材ですが、めっき加工は加工している時点で金とは別物です。加工品質と使用状況によっては長期使用に向いていないとも言えます。

金属アレルギーが発生しやすい

メリットのところで、「金属アレルギーが起こりにくい」と説明したことと矛盾しますが、金めっきは、金属アレルギーを起こりにくくすると同時に、金属アレルギーが起こりやすい加工でもあります。

金そのものはアレルギーリスクが非常に低い金属です。アレルギーの原因は、金めっきの土台としてよく使われるニッケル。つまり、下の素材が肌に触れるとアレルギーが発生する可能性があります。上記で説明したように、剥がれやピンホールなどで下の素材の影響を受けるリスクがあることが、めっき加工の大きなデメリットです。

純金めっきであればアレルギーリスクの高い金属をコーティングできるからアレルギーを軽減可能。一方、コーティングしている中の金属が何らかの原因で表面に影響すればアレルギーリスクが発生します。

金めっきが使用される製品・部品

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取材協力

めっきのプロにめっき加工のイロハを教えていただきました!

日本電鍍工業株式会社:寺内氏代表取締役社長寺内氏

日本電鍍工業株式会社

電気めっき業界の組合、「全国鍍金工業組合連合会(全鍍連)」にて、令和4年度に優良環境事業所の認定を受けためっき加工メーカー。
SURTECH 2023 表面技術要素展では大阪を代表して出展。クライアントの課題を解決するだけでなく、めっきの研究部門を創設し、技術向上に励むめっきのスペシャリスト。

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