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拡散浸透処理とは?めっき加工との違い

拡散浸透処理 めっき
特徴

アルミニウムや亜鉛、クロムといった金属元素と、素材を熱処理することで、素材表面から対象元素を浸透させて素材表面に被膜を形成する。

任意の金属を含有するめっき液に素材を浸すなどして、素材の表面に金属の薄膜を析出させて素材表面を金属被膜で覆う表面処理。

メリット
  • 耐食性や耐熱性に優れている
  • 耐摩耗性を向上させ表面強度を高められる
  • めっき液に含有する金属によって任意の特性を得られる
  • めっき槽を使った大量生産などにも対応
デメリット
  • 高温の熱処理を行うために素材の変形が生じる
  • 熱処理を行えない素材に対しては加工できない
  • 対象素材によってめっきできない場合がある
  • めっきが剥がれてしまうと加工特性も失われる

金属元素の拡散浸透処理は、素材表面にクロムやアルミニウムなどの金属元素を触れさせた状態で高温処理を行い、溶融した金属元素が素材の内部へ浸透していく過程で素材表面にも金属層(表面層/処理層)を生じさせる加工法です。拡散浸透処理は、金属被膜を素材表面に密着させるめっき加工に対して、密着性が高い表面処理である反面、高温の熱処理による影響を受けてしまい、加工できる対象物が限られるといった問題もあります。

目次

金属元素の拡散浸透処理の特徴

金属元素の拡散浸透処理とは

金属元素の拡散浸透処理は、熱によって任意の金属元素や素材を溶解させ、その金属元素を加工対象となる素材の表面から内部へ浸透させることによって、素材表面に強固な金属元素の表面層(処理層)を構築する加工技術です。

めっき加工のように、素材の表面に金属被膜が載ってカバーしている状態と異なり、溶融した金属元素が素材表面へ浸透して強固な表面層を形成しており、耐食性や耐久性などを追及しやすいといった特徴があります。

加えて、拡散浸透処理では選択する金属元素や素材によって、含有している炭素が反応して超硬質な炭化物を形成することもあり、加工後の表面強度や硬度を格段に向上させられるといったメリットもあります。

金属元素の拡散浸透処理の種類

金属元素の拡散浸透処理では、加工対象となる素材を「処理物」と呼び、アルミニウムやクロムといった金属元素を含有した金属粉末などを「処理剤」と呼ぶことがポイントです。また拡散浸透処理の方法についても金属粉末を利用したり、ペースト状にした金属塗料を塗布したり、あるいは事前にめっきを行った上で熱処理するといった方法があります。

処理物には主として鋼が選択されますが、処理剤には目的や処理法に応じて複数の金属元素や化合物などが選ばれることも重要です。

拡散浸透処理に採用される処理剤や処理法には以下のような種類があります。

  • 粉末パック法:金属粉末と焼結防止剤や反応促進剤などの混合粉末を素材に接触させて熱処理を行う。
  • ペースト法(塗布法):金属粉末をペースト状の塗料にして素材の表面に塗布してから熱処理を行う。
  • めっき加熱法:事前に目的の金属でめっきを行い、改めて熱処理によって表面の金属を浸透させる。
  • 流動層炉法:粉末パック法を発展させた方法であり、炉内で金属粉末などを流動させつつ加熱する。
  • 溶融塩法:ホウ砂に純金属の粉末などを添加して、その中で素材を熱処理する方法。

拡散浸透処理のメリット

拡散浸透処理のメリットは、優れた耐久性や耐食性、耐熱性などを素材に獲得させられる点です。また超硬質の炭化物によって表面が完全にカバーされ、表面強度や表面硬度が著しく高まります

塗布法やめっき加熱法を利用すれば、浸透処理を行いたい部分へピンポイントの表面処理をすることも可能であり、さらに焼き入れ加工などを同時に実行できるといった点もメリットです。

拡散浸透処理のデメリット

拡散浸透処理は主として鋼を素材に行われる処理法であり、また高温処理による加工のため素材が温度変化による影響を受けやすくなります。当然ながら熱に弱い素材は加工することができず、めっき加工よりも素材の幅が狭まってしまう点はデメリットです。

その他、処理剤として採用できる金属元素の種類もめっき加工と比較して小数です。

「めっきのめ」編集チームより

「めっきのめ」編集チーム

目的に合わせてめっき加工と拡散浸透処理を使い分ける

対象となる素材の表面に様々な金属の被膜を形成し、その金属の性質を付与するめっき加工に対して、金属元素の拡散浸透処理は素材となる処理物と処理剤に含まれている金属元素を高熱で反応させて、高強度な表面層(処理層)を生み出す加工法です。

そのため、めっき加工と拡散浸透処理ではそもそも加工の目的や得られる結果が異なっており、幅広い素材へ色々な金属特性を付与したり、美しい外観を再現したりしたい場合にはめっき加工が適しています

以下では、めっき加工について相談事例や解決法などを解説していますので、ぜひ参考としてご活用ください。

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取材協力

めっきのプロにめっき加工のイロハを教えていただきました!

日本電鍍工業株式会社:寺内氏代表取締役社長寺内氏

日本電鍍工業株式会社

電気めっき業界の組合、「全国鍍金工業組合連合会(全鍍連)」にて、令和4年度に優良環境事業所の認定を受けためっき加工メーカー。
SURTECH 2023 表面技術要素展では大阪を代表して出展。クライアントの課題を解決するだけでなく、めっきの研究部門を創設し、技術向上に励むめっきのスペシャリスト。

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