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亜鉛めっき

鉄素材に対して施されることの多い、亜鉛めっきとは何かについてまとめました。電気亜鉛めっき・溶融亜鉛めっきの特徴、クロメート処理の必要性などについてもチェックしておきましょう。

目次

亜鉛めっきとは

亜鉛めっきとは、鉄製品を対象に行われる表面処理加工のひとつ。装飾から機能めっきに至るまで、幅広く利用されている技術です。亜鉛めっきには、電気亜鉛めっきと溶融亜鉛めっきという2つの方法があり、その特徴は以下の通りです。

電気亜鉛めっきとは

電気亜鉛めっきとは、亜鉛を溶かし込んだめっき槽に鉄素地を浸漬させてから、電気を通してめっきを施す方法。液中で陽極(プラス極)にある亜鉛が電気を流すことで溶解し、陰極(マイナス極)にある鉄表面へと析出するという仕組みです。この電気亜鉛めっきは均一な亜鉛皮膜を析出することができ、しかも薄くて精度も高め。美観を求められる装飾品や、比較的複雑な形状の部品にも使用することができます。

溶融亜鉛めっきとは

溶融亜鉛めっきとは、亜鉛を高温で溶かしためっき槽に鉄素地を浸したあと、冷却して皮膜を形成する方法。「ドブ漬けめっき」や「てんぷらめっき」と呼ばれることもあります。電気亜鉛めっきと違って電気を使わず皮膜形成でき、比較的厚い皮膜(およそ50~100μm)を形成できるのがポイント。電気亜鉛めっきよりも防錆性能が高く、耐久性・耐候性が求められる製品に利用されるケースが多くなっています。

亜鉛めっきに欠かせないクロメート処理とは

亜鉛めっきは、錆びやすい鉄素材の防錆・防食を目的に行われる表面処理です。しかし、亜鉛には変色しやすい・指紋が付きやすいといった特徴があり、それをカバーするための後処理としてクロメート処理が行われます。クロメート処理とは、クロム酸を主成分とする処理液を用いためっき皮膜の化成処理。この処理を施すことで、素地の腐食を長期間にわたって防ぐことが可能となります。

亜鉛めっきの機能とメリット

素材が錆びるのを防ぐ「犠牲防食作用」がある

亜鉛めっきには、亜鉛の性質である犠牲防食作用による、高い防錆効果が期待できます。この犠牲防食作用とは、鉄素材が錆びる前にめっき皮膜が犠牲となって錆び、素材が錆びるのを遅らせる効果のこと。万が一、亜鉛めっき皮膜が損傷して鉄素材が露出したとしても、周囲の亜鉛が鉄より先に溶けて素材を保護してくれるのです。ただし、後処理であるクロメート処理を施さないと大気中の酸素で亜鉛がすぐに酸化してしまい、犠牲防食作用を十分に発揮できません。

腐食から素材を守る「保護皮膜作用」

亜鉛めっきは、鉄素材の表面に密着性の高い亜鉛皮膜を形成できるのが特徴。空気や水といった、素材を錆びさせる物質を通しにくいといった性質があり、腐食から鉄素材を保護する効果が期待できます。この保護皮膜作用は空気中・水中だけでなく、コンクリートや地中でも発揮されるのが特徴です。

溶融亜鉛めっきは、優れた耐久性を持つ

亜鉛めっきの手法のひとつである、溶融亜鉛めっき。この手法で施された皮膜は厚いだけでなく、鉄素材と亜鉛の合金化反応により、緻密に密着しているのが特徴。衝撃や摩擦といったダメージに強く、過度な力がかからない限り剥離することはほとんどありません。大気・酸素・二酸化炭素・水といった厳しい環境条件から素材を守り、寿命を延ばすといった効果が期待できます。

火山ガスへの耐候性

一般社団法人日本溶融亜鉛鍍金協会では、平成14年からの10年間に溶融亜鉛めっきに対する火山ガスの影響や溶融亜鉛めっきの変化について調査しました。

調査のきっかけは、かつてJR北海道管内において発生した架線金物の落下事故であり、問題は金物の腐食の原因として硫化水素ガスや亜硫酸ガスといった火山ガスによる影響があると想定されたことでした。そこで同協会はJR北海道からの要請を受けて火山ガスによる耐候性や影響を確かめる調査を実施し、結果として溶融亜鉛めっきは通常の金属素材よりも火山ガスに対して優れた耐候性や耐食性を維持できることを確認しています。

また、同研究の結果は平成27年7月の第35回防錆防食技術発表大会でも報告されました。

塩害による影響

平成26年9月に開催された土木学会第69回年次学術講演会において、一般社団法人日本溶融亜鉛鍍金協会と東日本高速道路株式会社による共同研究の結果として、溶融亜鉛アルミ合金と溶融亜鉛めっき、そして塩害との関係性が報告されています。

同報告では、通常の溶融亜鉛めっきよりも溶融亜鉛アルミ合金はさらに塩害対策として有効であり、適切なタイミングで塗装による補修作業を継続することで、FRPなどと同程度の耐久性が実現できる可能性が示唆されました。

水中での影響

溶融亜鉛めっきを水中に設置すると、めっき表面に保護皮膜が形成されて優れた耐食性を発揮することが報告されています。

ただし、亜鉛は両性金属として強アルカリの水溶液に接触することで急激に溶解することも重要であり、溶融亜鉛めっきが水中で優れた耐食性や耐久性を保持するためには水質(pH値)が非常に大きなポイントとして影響してくる点も見逃せません。

コンクリート中の耐久性

コンクリートの寿命や耐久性には塩分による影響も大きいとされており、標準的な品質のコンクリートにおける少量の塩分混入に対してであれば、溶融亜鉛めっきは優れた耐食性を発揮します。

ただし一定基準を超過した塩分濃度になった場合、亜鉛皮膜に孔食が生じてしまう点に注意も必要です。

長期的な防食効果で経済性に富む

亜鉛めっきを施した素材には、長期間にわたる防食効果が付与されます。環境や地域によってある程度の差はありますが、鉄素材表面のめっき層が完全に消耗するまで防食効果は続くため、補足的な防食対策やメンテナンスの必要性はほとんどなし。長期的な防食を目的とするならば、亜鉛めっきはかなり経済的な方法と言えるのです。

大小さまざまなサイズ・形状にめっきが可能

亜鉛めっきは、めっき層に浸漬できるものであればどのようなサイズであっても加工が可能。釘やボルトといった小さな部品はもちろん、幅10mに及ぶ大型製品まで対応できるのが特徴です(施工会社の設備にもよる)。また、細長いパイプや中空構造体といったものでも、溶融した亜鉛が出入りできるものであれば、均一な皮膜を形成することができます。

亜鉛めっきのデメリット

電気亜鉛めっきは、防錆・耐久性が弱い

電気亜鉛めっきの場合、一般的に約2~25μmの薄い皮膜しか形成できません。めっき皮膜は厚ければ厚いほど素材の防錆効果や耐久性が向上するため、電気亜鉛めっきは防錆効果や耐久性を重視する場合には不向きです。防錆効果など、機能的なメリットを追求したい場合は、溶融亜鉛めっきを検討すると良いでしょう。

皮膜形成における細かな調整がむずかしい

溶融亜鉛めっきの場合、めっき層の液体に素材を浸漬することで均一な皮膜を形成できます。しかしこの方法の場合、一部分にめっきの亜鉛が蓄積する、内部にガスが溜まるといったトラブルが起こることもあるため注意が必要です。

補修がむずかしい

亜鉛めっきは自然に剥がれることの少ない表面処理方法ですが、「めっき前の脱脂処理が不十分である」「強い衝撃がかかる」といったトラブルにより、皮膜が剥離することがあります。亜鉛めっきが剥がれた場合、常温での補修は難しくなるため、再度めっき処理を施す必要があります。

アルミニウム亜鉛めっきのプロセス

アルミニウム亜鉛めっき(亜鉛アルミニウムめっき)は亜鉛の特性とアルミニウムの特性を併用できるめっき加工であり、アルミニウムをベース材として保護皮膜として亜鉛めっきを施すという仕組みになります。

ただしアルミニウムはそもそも表面に酸化皮膜を形成しているため、アルミニウム亜鉛めっきを行うには前処理など通常の亜鉛めっきとは異なるプロセスを経なければなりません。

普通のアルミニウムを使用する場合、まずアルミニウムを洗浄プロセスで処理して、表面にある酸化物や不純物を取り除く必要があります。

その後、およそ460度の溶融亜鉛浴へアルミニウムを浸漬させて冶金反応を起こし、アルミニウム表面に亜鉛層を形成させるという流れです。

亜鉛めっきが使用される製品・部品

  • 防音壁支柱
  • ガードレール
  • 標識柱
  • 照明柱
  • 箱桁橋梁、跨線橋などの橋梁
  • 架線金物、ボルト・ナットなどの部品
  • マンションの外階段…など

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めっきのプロにめっき加工のイロハを教えていただきました!

日本電鍍工業株式会社:寺内氏代表取締役社長寺内氏

日本電鍍工業株式会社

電気めっき業界の組合、「全国鍍金工業組合連合会(全鍍連)」にて、令和4年度に優良環境事業所の認定を受けためっき加工メーカー。
SURTECH 2023 表面技術要素展では大阪を代表して出展。クライアントの課題を解決するだけでなく、めっきの研究部門を創設し、技術向上に励むめっきのスペシャリスト。

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