グラスライニングとは?めっき加工との違い
グラスライニング | めっき | |
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特徴 | 金属素材の表面をガラス素材でカバーして耐食性や平滑性などを高める加工であり複合材料製造技術。 |
素材の表面に金属成分を析出させて金属被膜を形成し、それぞれの金属特性に合わせた性質を付与する。 |
メリット |
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デメリット |
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グラスライニングは、金属素材を素地として、ガラス粉末を吹き付けながら800~900度で焼き付けることにより金属素材の表面をガラス素材(非金属被膜)で覆ってしまう表面加工技術であり、複合材料の製造技術です。このページでは、グラスライニングの特徴やめっき加工との違いについて解説します。
グラスライニングの特徴
グラスライニングとは
グラスライニングとは金属素材とガラス素材の複合材料であり、金属素材を素地としてその表面に粉末化したガラスを吹き付けながら、高温で焼き付けることにより両素材を融合させる非金属表面加工技術です。なお、耐食性に優れたガラス(うわぐすり)をそのまま金属素地へ接着・融合させることは困難なため、通常は金属とガラスとの間に中間的性質をもったガラス(したぐすり)を結合させ、段階的に層を構成することがポイントです。
グラスライニングは耐久性や強度に優れている金属素材のメリットと、耐食性に優れているガラス素材のメリットを融合させることで、様々な分野で活用できる新素材を実現します。
グラスライニングの種類
グラスライニングでは様々な種類のガラス素材を「うわぐすり」として使用することにより、異なる性質を持った複合材料を獲得することが可能です。
グラスライニングで使用されるグラスには以下のようなものがあります。
- 高耐食性グラス:耐酸性や耐アルカリ性など耐食性に優れたグラス素材
- ステンレス用グラス:ステンレス鋼へのグラスライニング用の素材
- 耐熱衝撃用グラス:高温域での使用や加熱急冷への耐性を高めたグラス
- 耐アルカリ用グラス:耐アルカリ性を強化したグラス
- 静電気対策用グラス(導電性グラス):導電性を高めて静電気の発生を抑えるグラス
- 金属元素低溶出用グラス:アルカリ金属や金属イオンの溶出を抑制して汚染リスクを抑えたグラス
- 耐摩耗性グラス:表面の耐摩耗性を強化したグラス
- 耐付着性グラス:表面へ他の物質が付着することを抑えるためのグラス
- 医薬用グラス:耐水性や化学薬品への耐性、耐付着性を高めつつ医薬用途に適したカラーに染めたグラス
グラスライニングのメリット
金属とガラスのメリットを両立
グラスライニングのメリットは、金属が備えている特性と、ガラスが備えている特性の、両方を素材に活用できる点です。例えば鉄は強度に優れる反面、錆びやすいというデメリットがあります。一方、ガラスは化学耐性が高い反面、割れやすいことが問題です。
その点、グラスライニングでは金属素材の強度を備えながら、ガラスによって耐食性や耐候性を高めることで、素材の品質を維持しやすいといったメリットを追求できます。
グラスライニングのデメリット
高温下での熱処理が必要で加工できる会社が限られる
大前提として、グラスライニングでは金属素地にグラス粉末を焼き付ける工程が必要です。そのため、そもそも熱に弱い素材に使用できません。
また、例えば筒状の部品の内側などグラス粉末を均一に吹き付けることが困難な部位にグラスライニングを施すこともできません。
加えてグラスライニングは焼成処理を行うための設備を必要としており、加工できる会社が限られることもデメリットです。
その他、カラーバリエーションはめっき加工に劣ります。
グラスライニングとめっき加工の適性を考慮する
グラスライニングは金属素材にガラス素材を焼き付けて、金属表面をガラスで覆う非金属被膜を活用した表面加工技術であり、複合材料製造技術です。それに対して、めっき加工はめっき液などに含有される金属成分を、各素材ワークの表面に析出させて金属被膜を形成する技術であり、表面金属に対応した特性を付与します。
そのためグラスライニングとめっき加工は根本的に用途や目的が異なっており、それぞれの特性やメリット・デメリットを理解した上で使い分けることが大切です。
なお、以下のページではめっき加工について様々な疑問や、それに対する解決法などをまとめていますので、ぜひそちらも参考にしてください。
当サイト「めっきのめ」の取材協力について
めっきのプロにめっき加工のイロハを教えていただきました!

日本電鍍工業株式会社
電気めっき業界の組合、「全国鍍金工業組合連合会(全鍍連)」にて、令和4年度に優良環境事業所の認定を受けためっき加工メーカー。
SURTECH 2023 表面技術要素展では大阪を代表して出展。クライアントの課題を解決するだけでなく、めっきの研究部門を創設し、技術向上に励むめっきのスペシャリスト。
「めっきのめ」編集チームより