ステンレスにめっきできますか?
鉄にニッケル、クロムを添加した合金であるステンレス。錆びに強く加工性も良好であるため、多様な分野で使用されている素材です。ステンレスへのめっきは、はんだ付け性や電気伝導性を高めることを目的に行われますが、普通に加工を行ってもうまく皮膜が付きません。その理由や対処法などを注意点としてまとめてみましたので、ぜひ参考にしてください。

ステンレスにめっきをする場合の注意点とは
不動態被膜が原因でめっきが付きにくい
鉄を主成分に、クロムやニッケルを加えた合金がステンレスです。このステンレスの表面には、不動態被膜という強固な酸化被膜があります。この被膜がある状態で加工を行ってもめっきが付かず、密着不良になってしまうのです。
専用の前処理+ストライクめっきで対応
この不動態被膜は、一般的なめっき工程で用いられる前処理では取り除くことができません。そのため、通常の前処理(脱脂)に加えて、ステンレスに特化したストライクめっきを施す必要があります。
ストライクめっきとは、不動態被膜が生成される前に薄くニッケルめっきをつけてしまう処理のこと。こうすることでステンレスとの密着性が高まり、無事にめっき加工を施すことができるようになります。
ステンレスを装飾目的として使用する際は化学研磨という手段もある
ステンレス製品の表面をきれいにしたいといった場合は、めっきではなく化学研磨を用いる方法もあります。化学研磨は薬品による化学反応を使った表面処理で、薬液に触れている部分はすべて均一に研磨されるのが特徴。形状が複雑な製品や、筒状の製品の内部まで研磨したい、不純物をキレイに落としたいといったニーズに適しています。

取材協力:日本電鍍工業株式会社
ステンレスはめっきしにくい難素材です。
ステンレスとは、ステイン(汚れ)+レス(否定)という意味の金属。ステンレスには表面に薄い膜(不動態被膜)があるために、錆びに強いという特性があります。
めっき加工の観点では、化学変化がおこしにくいのでめっきがしにくい金属のひとつ。めっきをする場合は不動態被膜を削り取りながらめっきをしていきます。
アルミとの違いは、アルミは酸化被膜を取ればある程度アルミ自身は化学反応しますが、ステンレスはそのもの自体が反応しにくいんです。これをいかに対応していくかというのが我々めっき加工会社の腕の見せ所になるのかもしれませんね。
当サイト「めっきのめ」の取材協力について
めっきのプロにめっき加工のイロハを教えていただきました!

日本電鍍工業株式会社
電気めっき業界の組合、「全国鍍金工業組合連合会(全鍍連)」にて、令和4年度に優良環境事業所の認定を受けためっき加工メーカー。
SURTECH 2023 表面技術要素展では大阪を代表して出展。クライアントの課題を解決するだけでなく、めっきの研究部門を創設し、技術向上に励むめっきのスペシャリスト。