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黒皮材にめっきできますか?

めっき加工の際に、問題となりやすい黒皮。この黒皮があるとめっき加工にどのような影響があるのか、どのような対処法があるのかといった情報をまとめてみました。

目次
ステンレス

黒皮にめっきをする場合の注意点とは

そもそも黒皮とは?

黒皮(くろかわ)とはミルスケール・酸化スケールとも呼ばれるもので、鉄鋼材料の上に生成される黒色・黒褐色の酸化被膜。鉄鋼材料を熱間圧延加工で作る際に空気中の酸素と反応し、表面に発生するものとなります。この黒皮が素材表面を覆っている状態でめっき加工を施すことは難しく、性能だけでなく見た目にも悪影響を及ぼします。

黒皮材にめっき加工を施すには

黒皮で覆われた鉄鋼材料は、表面が粗く凸凹している状態。このような状態の表面に良好なめっき皮膜を形成することは難しいため、まず黒皮をしっかりと取り除く必要があります。この黒皮除去に使用されるのは、切削・研磨・酸洗い・ショットブラストといった技術。ただし、これらの工程を挟むことでコストアップにつながる恐れがあります。

黒皮を除去する方法

黒皮の除去には化学的な方法と物理的な方法があり、物理的な方法では「ショットブラスト」、化学的な方法では「酸洗い」を使用するケースが多くなっています。

酸洗い

塩酸・硫酸といった強い酸性溶液を用いて、鉄鋼材料表面についている黒皮・錆び・溶接焼けなどを取り除く工程です。その工程は一般的に、脱脂→水洗→酸洗い処理→水洗→中和→水洗→乾燥と進みます。使用する溶液については、鉄やステンレスといった対象物によって変わるため、注意が必要です。

ショットブラスト

ショットブラストとは、鉄鋼材料の表面に細かい砂・鉄球といった投射物を衝突させ、研磨効果をもたらす方法です。ショットブラストを使用すると素材表面に凹凸ができ、光沢のないザラザラとした仕上がりになります。その見た目から、梨地状態と呼ばれることもあります。ショットブラスト後はめっきの密着性が高まりますが、光沢を出したい場合には向いていないので要注意。また、処理後の鉄鋼材料は素地が空気に触れて錆びやすくなるため、すみやかな加工が必要です。

黒皮を削って落とすことはできないの?

ディスクグラインダーといった器具で黒皮を物理的に削って落とす方法もありますが、ひとつひとつの処理を作業員が行わなくてはならないため、労力とコストがかかります。また、仕上がりが均一になりにくいため、ショットブラストや酸洗いなどを利用するケースが多くなっています。

日本電鍍工業株式会社 日本電鍍工業株式会社 代表取締役社長寺内氏

取材協力:日本電鍍工業株式会社

黒皮材を剥がしてからならめっきが可能です。

黒皮材は切断した時にバリがでにくいことから、建築金物として使用されるフラットバー(平たい金属の板)などによく使用されています。
ハンドリングしやすく、一時防錆剤としては非常に優秀ですが、雨ざらしにしておくとサビてくるので、めっきの依頼をいただくこともあります。
黒皮材を使用している建築金物は、材料代・加工代・めっき代のなかで、場合によってはめっき代が一番高くなるケースも少なくありません。そういう場合はめっきをしないこともあるのですが、防錆の意味では黒皮でもめっきすることがおすすめです。

また、黒皮材は表面が守られている反面、非常に取れにくく、その特徴はメーカーによってもことなります。まずは一度ご相談ください。

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取材協力

めっきのプロにめっき加工のイロハを教えていただきました!

日本電鍍工業株式会社:寺内氏代表取締役社長寺内氏

日本電鍍工業株式会社

電気めっき業界の組合、「全国鍍金工業組合連合会(全鍍連)」にて、令和4年度に優良環境事業所の認定を受けためっき加工メーカー。
SURTECH 2023 表面技術要素展では大阪を代表して出展。クライアントの課題を解決するだけでなく、めっきの研究部門を創設し、技術向上に励むめっきのスペシャリスト。

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